18日に発売された『新潮45』の最新号が掲載した特別企画「そんなにおかしいか『杉田水脈』論文」が波紋を広げている。

 きっかけとなった文章を執筆した自民党の杉田水脈衆議院議員が口を閉ざす中、同誌は7人の論客が「論文の『生産性』は誤読されている」「LGBTは国家や政治が反応すべきではない。レズ・ゲイは性的嗜好」「メディアの杉田議員への個人攻撃が過ぎる」といった議論を掲載。

これに対し、新潮出版文芸のTwitterアカウントが「良心に背く出版は、殺されてもせぬ事(佐藤義亮)」と新潮社創業者・佐藤義亮の言葉を投稿、『新潮45』の編集方針を批判するツイートを次々とリツイート。さらに同社の広報宣伝、新潮文庫や競合である河出書房、岩波文庫などのアカウントも応援する姿勢を見せている。

 このことについて、別の部署で雑誌編集をしているある社員は、AbemaTV『AbemaPrime』の取材に「朝いちばんに役員が編集部に来て『ツイートをやめさせろ』と言ったのですが、誰がツイートしているのかわからないので、できなかった。多くの作家がコメントしているので、上の人たちは作家対応をどうするか協議しているようだ」と回答している。

 番組では今回の企画に「政治は生きづらさという主観を救えない」というタイトルの文章を寄稿した論客の一人、文藝評論家の小川榮太郎氏を招き話を聞いた。

 

■「性というものの本質は"慎む"こと」

 小川氏は『新潮45』をめぐる騒動に関し、「バカバカしい」と語り、今回の寄稿について「論文に書いた通り、"パンツぐらい履いとけ"ということだ。つまり、性的なことというのは居酒屋で話すのはいいが、社会で議論すべきことではない。みなさんにも性的なことは色々おありだろう。私にもある。そういう問題については、昔から"慎む"という文化がある。

言葉においてもそうで、源氏物語も大変な不倫の物語だが、性交の場面は一回も出てこない。それが我々の人類の、または日本の性との関わり方であり、工夫だ。私はその部分を言ってるだけで、生物学者ではないのに細かい部分において"オスとメスしかない"とか"オスとメスの間にオスメというのがいるよ"とか言われても困る。日本語で『志向』か『嗜好』かというが、それは言葉遊びだ。性というものの本質は"慎む"ことであって、その常識に立ち返りなさいよ、といういうことだ」と説明。

 また、「同性愛者の人も手をつないで歩いたらいい。言論人などが自分の立場を公に喋る必要はないということ。私は今回の論文で"同性愛者は知的にも美的にも素晴らしい感性の持ち主が多い"と書いている。文章を2度くらい通して読んでほしい。私は普通にLGBTの人たちとも付き合っている」と強調。「LGBTが"ダメだ"と言うことと、"ノーマルではない"と言うことは違うし、"ノーマルに感じなさい"という必要はない。人類が長い時間をかけて選んできた感覚に対して間違っているというのは一種のファシズムだ」と語った。

■「日本人自身が議論していくべきだ」

 論文の中で小川氏は「政治の役割は生命、財産、安全のような、人生の前提となる『条件』を不当な暴力から守る事にある。大きな政府論だろうと小さな政府論だろうとこの大原則は揺るがせてはならない。それは苦痛や生き難さも含めた人生の私的領分という尊厳を権力に売り渡すことに他ならないからだ」とも記している。同性婚を認めるなど、制度面で整備について「慎重だ」と話す小川氏は、その根拠について「具体的な害悪があるかどうかではない」と説明する。

 「そもそも私が言う結婚には、近代的な権利よりも遥かに古い、宗教的な淵源があるもの。親族共同体、民族共同体のなかで男女を言祝ぎ、その永続を祈っていく、それが本来のあり方。それが近代になって法律を作り、家族制度を整えた。そのことについて否定はしないが、同性愛に何万年もの歴史があるのに対し、同性婚ができたのはこの10年、20年。つまり、人類は数万年にわたって色々な形で同性愛と共存したけれども、婚姻とは結び付けなかった。このことに対する慮りがない傲慢さは信じられない。この長さこそ決定的だということが私のような保守的な人間の基本だ。近代に生まれたイデオロギーというのは50年後、100年後に変わる可能性がある。つい50年前、日本でもアメリカでもヨーロッパでも、立派な知識人が"マルクス・レーニン主義こそ人類の最終回答だと"言っていて、私のような人間は袋叩きに遭い。"これがわからないなんて遅れた人間だ、恥ずかしい"と散々言われた。しかし今は跡形もないし、レーニンやスターリンを褒めたら大変なことになる。もちろんイデオロギーを100%否定はしないし、じっくり文章を読んでくれれば、対話点は見つかると思う。だから喧嘩をすることが良いこと。論文を書き合い、場合によっては怒鳴り合い、それを通じて着地点を見出していくなら良いけど、そういうプロセスを経ないで、欧米の趨勢だから"進歩だ"という。それが本当に進歩かどうかは、何百年か経たないとわからない。これが日本の悪いところだ」。

 そして「権利なんて言い始めたのも、ここ50年の愚かな欧米人で、もともと欧米でも慎んできた」と指摘、「そもそもキリスト教圏においては、同性愛を犯罪として捉えた歴史が長く、場合によっては死罪になった。いわばそういう魔女狩りに対する反動で、ある局面で反省を始め、近代的な権利システムに置き換えようという動きが出てくる。欧米にも固有の歴史や発想法があり、それは極端で原理的なところまでいってしまいがちだ。そもそも我が国においては同性愛は極度の社会的タブーではなかった。武士やお寺にもあったし、多くの文化や風俗にも残っている。もちろん変えていくべきことかもしれないし、日本古来の歴史の中で同性婚をどう位置づけるかという議論を、日本人自身がしていくべきだ」と持論を展開した。

 

■「与党の政治家としてLGBTについて発言すれば、必ず税金投入の話になる」

 さらに小川氏は、政治と性の問題について「たとえ良い政治であっても、それは人の人生に対する規制であり、外部からのパワーになる。一番大事なのは、私的な領域で自分の人生をいかに深めるかだ。そこに関わりやすいのが性であり、結婚だ。文学を見れば、古来、性や結婚を扱ってきた。それは人生でぶちあたる主題だからだ。そういう形で議論を深めればいいということであって、政治で扱うのをやめろとは言っていない。議論の中からコンセンサスが生まれてくるのは素晴らしいことだと思う。そういう問題を論じて、政治的にも誠実にやろうという人に対して"バカか"などとは言わない。ただ、あまりにも一方的な杉田さんへバッシングへの防戦として、きついレトリックを使った。非常に重要なことは、個別の問題に一個一個対処していくの政治の仕事だし、法律の仕事。それをあるくくりをもって、非常に大きな社会的なプレッシャーとしてしまうと、非常に発言しにくくなる」と話す。

 クローズアップされた杉田議員の「生産性」という言葉についても「"生産性"という言葉だけがクローズアップされているが、杉田さんは非常に大きな、国家の文脈の中で語っている。今、日本は世界で類を見ない激烈な人口減少社会に突入していて、100年後には4400万人になってしまう。安倍政権も取り組んでいるが、まだ生ぬるい。このままでは本当に民族が消滅する。だから政治家が取り組むべき重要な問題が人口問題だが、行政の側に立つ与党の政治家としてLGBTについて発言すれば、必ず税金投入の話になる。そのことに日本社会が合意ができるのかという文脈があっての発言だ」と説明した。

 

■ゲイ公表の鈴木賢氏「どんどん人が亡くなっていく。急がなければいけない」

 小川氏の主張に対し、自身もゲイであることを公表している明治大学の鈴木賢教授は「こういうことがテレビや雑誌や新聞で議論ができるようになったのは私もいいことだと思う」としながらも、「ご自身が良く知らないことについて公の場所で、特に文章で書くことはされないほうがよろしいと思う。恥ずかしいと思う。言葉を使って生活されている方が"嗜好"か"志向"か"指向"かはどうでもいいなんて、その感覚に驚く。"パンツを履け"という話をしていたが、異性愛だって性的指向の一つだと同じだということに、どうして気がつかないのか。男女が街で手をつないで仲睦まじく歩いたりキスをしたり、あるいは親子がピクニックに出かけているのを見ると、私は"異性愛者なんだな"と思う。それは小川さんの言葉を借りれば"パンツを履かないで歩いている"ということになる。でも、それは法律や特権で守られているからできることだし、我々がカムアウトできないのは、世間のプレッシャーを感じ、社会や国や法律がちゃんと位置付けてないからだ。杉田議員の文章に最初に批判の声を上げた尾辻議員は第1号のレズビアンの議員だと言われている。彼女のような人がようやく出てきた」と反論。

 「日本にあったのは男性間の性行為だけで、同性愛者はいないことになってきた。それは皆が異性愛者のふりをしてきたからで、アイデンティティの問題としては処理されてこなかった。今はそれをアイデンティティの問題だと解釈するようモードが変わってきた。にもかかわらず、日本に寛容な文化があったというのは、悪質な作戦だ。日本はこの150年、西洋の制度を受け入れてきた。それができないなら、江戸時代に戻るしかない」。

 また、「『政治は生きづらさを救えない』という命題自体が間違っていると思う。LGBTの人が生きづらいのは、人為的な理由だ。自分の中で抱えているのではなくて、制度が私たちの存在を想定していない。つまり、異性愛者の人だけがいるということを前提として制度ができ上がっているので、その中で私たちの生きづらさが人工的につくられている。だから、我々の生きづらさの改善の問題は全て政治の課題だと思う私達は法律や制度によって、性的な自己決定権を奪われている。戸籍の性別を変えるのにも高いハードルが課せられている。すでに25か国で認められている婚姻も認められていない。こんな遅れた国は日本だけだ。小川さんのようにLGBTを攻撃したり、フレンドリーじゃない言論にあふれている中で、この問題を放置すればどんどん人が亡くなっていく。急がなければいけない」と訴えた。(AbemaTV/『AbemaPrime』より)

▶放送済み『AbemaPrime』は期間限定で配信中

Source: HuffPost Japan

EMBC&SWAショップ

EMBC情報微生物工学とSWAハイテク素材工学から誕生したアイテムご購入希望の方へ

個人、医用、農業、畜産、漁業等はもちろんのこと、一部上場企業の環境改善を始め、業界TOPの染色工場、繊維加工工場、食品工場等、国内外で多く成果を出している商品です。ご自身の健康増進や環境改善にとどまらず、この素晴らしいアイデアを一緒に広めていただく方を募っております。まずは、ご自身の健康増進や環境改善にお役立てください。

おすすめの記事