科学技術やテクノロジーの力で人間を新たな次元に進化させるという思想「トランスヒューマニズム」。Facebook創設者のマーク・ザッカーバーグ氏、自動運転車を開発するテスラモーターズ取締役のイーロン・マスク氏など、実業界の大物たちも賛同、3年前のアメリカ大統領選挙に出馬したゾルタン・イシュトバン氏が提唱して以来、一躍注目を浴びている。ゾルタン氏はインタビューで「私たちは自分の身体をアップグレードし始める。おそらく5年後には義手や義足をつけるために問題のない自分の体を切る人が出てくるだろう」と語っている。

 また、ゾルタン氏は「我々の最終的な目標は新たな科学とテクノロジーで死を克服することだ」とも話し、「私がもし今死んでしまった場合、"クライオニクス"、つまり自分を冷凍保存して、未来で生き返るのを待つ」と主張している。

 雑誌『月刊ムー』でトランスヒューマニズムについての特集記事を執筆した翻訳家・作家の宇佐和通氏は「1962年にアメリカのロバート・エッチンガーという人が自費出版した『不死の可能性』というタイトルの本がクラオニクスムーブメントの礎になったのではないかと言われている。ニューヨーク・タイムズなども報じて一大センセーションが起こり、1972年にクラオニクスインスティテュートが設立された。そして1980年代半ばには再生可能冷凍保存技術が開発され、2000年頃なると不凍液を入れて組織が壊さないようガラス化して保存されるようになった」と話す。

 14日放送のAbemaTV『AbemaPrime』では、このクライオニクス施設を提供するロシアのKrioRus(クリオロス)社の代表、ウダロワ・ワレーリヤ・ビクトロブナ氏に話を聞いた。

■身体から全ての血液を抜き、液体窒素が充満したポットに...

 ワレーリヤ氏によると、まずは運ばれてきた遺体の損傷を防ぐために氷風呂に着け、予備冷却を行う。その後、機械で胸部を圧迫、全身に血液と酸素を循環させる。続いて血管に特殊な機械を繋ぎ、身体から全ての血液を抜きながら凍結を防ぐための特殊な液体"クライオプロテクター"と入れ替える。冷凍時に体内に血液が残っていると、血管が破裂して細胞を傷つける危険があるためだ。

 そして液体窒素を部屋に流し込み、3時間かけて遺体をマイナス124℃に冷却。最後にアルミの容器で包んだら、液体窒素で満たされマイナス194℃になるよう制御されたポットに入れる。その後は、科学が発展して復活する未来をただひたすら待つのだ。

「私たちがクライオニクスを始めた2003年以降、64人を冷凍保存してきた。昨日も1人、ベラルーシ生まれで30歳の女性を冷凍保存した。モスクワでバイクに轢かれ即死だったといい、死後30分に電話をもらった。生前に本人が冷凍保存を希望していたそうで、夫が契約を結んだ」。

■すでに日本人女性が冷凍保存中、きっかけは「スタートレック」

 ワレーリヤ氏によると、費用は1人あたり全身が36000ドル(約400万円)で、頭部や脳だけで18000ドル(約200万円)。保存期間は"生き返るその日まで"、もしくは"科学的に生き返るのが絶対に不可能だと証明されるまで"だという。また、契約しさえすれば誰でも冷凍保存してくれるといい、すでに"ミチコ"という名の日本人女性が冷凍保存されているという。

 同社のホームページによると、日本で最初のクライアントとなったミチコさんは当時87歳。依頼したのは54歳の息子で、米国在住で「スタートレック」シリーズを観てクライオニクスを知った兄の思いが決断を促したのだという。

 自身を"ロシアのトランスヒューマニストのリーダーの1人"だと話すワレーリヤ氏。目標は"永遠に生き続ける"ことで、それが叶わずに死んでしまった場合はもちろん自分を冷凍保存、「未来で生き返り、若く美しい体を手に入れて、地球とは別の惑星に行って、そこで暮らそうと思っている」と話した。

■脳の情報をデジタル化して永遠に生き続ける研究も

 日本で唯一、KrioRusと組んで冷凍保存をサポートしているのが、日本トランスライフ協会だ。トランスヒューマニズムにまつわる事業を実施しており、人間の能力の拡張、生命の延長の研究に取り組んでいる。

 同協会の鏑木孝昭氏は、KrioRus(クリオロス)社の施設を訪れたことがあるという。「ロシア人は実利的なので、倉庫に遺体を入れるものが雑然と置いてあるという感じだ。1つの容器の中に世界各地の方々、何人かが頭を下にして入っていた。本当に可能なのかという議論もあるが、KrioRusも他の団体も、自分たちが復活させると言っていた。できないことを証明するのも科学の世界では非常に難しい」。

 鏑木氏によると、生前に冷凍させることは法律上難しく、オーストラリアでは生前に冷凍することの是非を最高裁まで争い、敗訴したケースもあるという。「日本の社会、法律では遺族の権利がものすごく強く、生前に間違いのないようにご説明する。ご遺体を海外に送る場合、書類の用意から申請・許可に2週間くらいかかるので、亡くなられたら一刻も早く冷やし、マイナス80℃で保管しておく。空輸中はそこまでできないので、ドライアイス等で0℃以下にして送った」。

 また、頭部や脳の保管に関連したところでは、脳の情報をデジタル化してコンピューターにアップロードすることで意識・思考が永遠に生き続けられるという「マインドアップロード(精神転送)」の立証が試みられている。研究しているのは脳科学者の渡邉正峰・東京大学大学院准教授で、現在、マウスを使って意識をアップロードしようとしている。「うまくいけば5、6年で、そこから猿に移って10年くらい。最終的に人間で試すに値する時期は20年後くらいに来ると考えている」と話す。

 宇佐氏は「残された人は、やっぱりいつまでも生きていてほしいという気持ちになるもの。ただ、生命倫理の問題や宗教観など色々なものが絡んでくる話だと思うので、俯瞰したところから見て、議論していきたいと思う」と話した。(AbemaTV/『AbemaPrime』より)

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Source: HuffPost Japan - Athena2 - All Posts

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