待機児童といえば「0~1歳で保育園に入れなかった子どもたち」をイメージする人が多いのではないだろうか。もちろんそれも正解だが、じつは0~1歳で保育園に入れれば万事OK、というわけではない。

0~2歳までの子どもが通う「小規模保育所」の卒園児たちは、3歳以降の預け先が確保できないかぎり、行き場を失ってしまう。

小規模保育所とは、2015年度に施行された「子ども・子育て支援新制度」で生まれた「地域型保育事業」のひとつだ。保育ニーズの高い0~2歳を、定員6人以上19人以下の小規模施設で保育する。大型の保育園と比べて省スペース・省人員で運営できるため、待機児童解消に大きく役立ってきた。

しかし、小規模保育所を卒業した子どもたちの受け皿は、現状まったく足りていない。この状況は"3歳の壁"と呼ばれている。

多くの家庭ではなんとか仕事を続けるために、無理をして遠くの保育園に通わせたり、保育ニーズが満たされているとはいえない幼稚園に入れる。納得しているならよいが、妥協している場合も少なくない。結果として、その子どもたちはふたたび「待機児童」にカウントされることもなく、問題は目に見えないままだ。

受け皿の確保は、2019年度末が期限となっている

そもそも小規模保育所には、卒園児が通うための「連携施設の確保」が義務づけられている。だが、新制度施行時はまず、0~2歳の待機児童を受け入れる施設を増やすことが急務。あとのことは追って、という内情から、連携施設の確保には5年間の経過措置がついていた。その期限が、2019年度末に迫っている。

期限までに連携施設を確保できない場合、都からの認可を取り消される可能性もあるという。そうなれば、多くの園ではいままでどおりに0~2歳児を預かることすら難しいだろう。

国や自治体は必要なサポートを行うものの、連携施設確保の主体は各小規模保育所だ。それぞれの保育所が、近隣の大型保育園や幼稚園、こども園などに連携を打診するものの、どの施設も定員はいっぱいのため、門前払いも珍しくないという。

待機児童を減らすための施策が、対応を先送りにしたともいえる

東京西部の区をいくつか例にして、概況を見てみよう。

2013年に待機児童数でワースト2位を記録した練馬区は、新制度が決まってすぐに、小規模保育所をどんどん増やした。2016年度に9園、2017年度は13園が新設されている。この2年間は保育サービスの利用児童数増加でもトップ3にランクインし、スタートダッシュの努力がうかがえる。

しかし現在、50園ある小規模保育所のなかに、連携施設が定まっている園はひとつもない。2歳児の定員数から計算して、最大で371人が、来年4月の卒園後に行き場に困る。各小規模保育所と連携候補施設の面談を設定するなど、区としても力を尽くしているようだが、状況は厳しい。

板橋区の小規模保育所数は、現在43園。最大で296人の子どもたちが行き先に悩む。来年度末の期限に向けて、各小規模保育所のサポートを進めているが、厳しさは同様だ。

また、2018年度からは小規模保育所の卒園児に指数を加点するなど、利用調整でのケアを実施するように、内閣府から各自治体に通達もなされたという。

多くの"潜在的な待機児童"を抱える区が目立つなかで、豊島区や渋谷区ではしっかりと連携施設が確保されている。

しかし、小規模保育所がなければ、0~2歳の待機児童すら減らない現状がある以上、いったん受け皿を増やした練馬区や板橋区が、一概に悪いともいえない。

「保育園の3歳児入園は絶望的、幼稚園は理解がない」

練馬区で"3歳の壁"に直面している、当事者たちの声を聞いてみた。

奈津美さん(仮名)は、来年3月に子どもが小規模保育所を卒園する。

「子どもが0歳のときから、目を皿のようにして近所の新設園をチェックしています。1歳でなんとかいまの小規模保育所に入れたけれど、その後も近くに開園するのは小規模ばかりで、新設園は期待できません。5歳まで預かってくれるような大型園では、3歳入園の枠は1~2名しかなく、世帯収入の多い我が家は絶望的です」

入れそうな保育園がない場合、多くの保護者が幼稚園を選択肢にくわえる。保育園に比べると預かり時間がぐっと短くなり、保護者の行事参加といった負担も増えるが、背に腹は代えられない。

しかし、来年度4月から入園させるためには、今年の秋からスタートする説明会や見学会に出る必要がある。そのうえ、10~11月ごろには申し込みをして、すぐに何万円もする入園金を振り込まなければならないという。

「一縷の望みにかけて認可保育園の申し込みをしたとしても、結果が出るのは来年の2月。本当は保育園に入れたいのに、その結果を待たずして、幼稚園に入れるためのアクションをとらなければならないんです」

さらに奈津美さんを追い詰めるのは、幼稚園の無理解だ。

「給食を頼めるサービスがあっても『基本はみんなお弁当なので、お宅のお子さんにだけ給食を食べさせる、というのはおすすめできません』とか、『仕事で行事を休むのは絶対にやめてください』などと、説明会で言われたりするんです。幼稚園は保育施設ではないので仕方ないのかもしれませんが、共働き家庭にこれほど非協力的だとは思いませんでした。もちろん、園の方針によって差があるのはわかっています。でも、通える範囲には共感できる幼稚園がない。3歳以降、子どもをどこに預けて働けばいいのか、本当にわかりません」

現状では、共働き家庭にも理解のある幼稚園が、エリアのばらつきなく増えていくことを願うほかない。

「連携施設のマッチングは、教育方針などの壁もある。新設園をつくるには物件がない」

都内でいくつかの保育所を持ち、練馬区内で小規模保育所を運営する株式会社の代表取締役・大原さん(仮名)は、状況をこのように語る。

「小規模保育所ができはじめた2015年ごろは、行政が連携施設を探してくださるというお話だったんです。なので自治体主導のもと、連携できそうな幼稚園や保育園などと、マッチング面談をするチャンスがつくられていました」

とはいっても、そもそも定員がいっぱいの園に、新しい子どもを受け入れることはできない。

「万が一、人数の問題をクリアできたとしても"園の連携"はとても難しいことなんです。それぞれの施設で教育方針があるため、どんな子でも受け入れますよ、とはいきません。くわえて幼稚園では、自分たちの教育にプライドを持っていらっしゃるため、その傾向は顕著です」

そこで、大原さんたちは自力で新設園をつくる方向に舵を切った。連携できる施設が見つからないならば、自分たちで物件を確保し、3歳以降の子どもたちもそのまま保育しよう、という取り組みだ。

「でも、問題は山積みです。保育園を運営するための物件には、さまざまな基準が設けられています。たとえば、1981年に施行された新耐震基準を満たしていること、2方向に避難できる出入り口があること、適切な建築検査が済んでいること......。こういった条件をすべてクリアできる建物は、驚くほど少ないんです。以前、理想的な候補物件が出てきたときも、たった1枚の建築書類が見つからなかったため、計画を断念せざるを得ませんでした」

多くの保育事業者が、このように物件確保の段階でつまずくのだという。とにかく、東京都には土地が足りないのだ。大原さんは「建物や土地さえ提供してもらえれば、なんとかしたいと思っている事業者は多い」と語る。

たとえば、保育園の開設条件を満たす物件が、飲食店やコンビニに使われるケースがある。そんなとき、物件が貸しに出された段階で、まずは保育事業者へ優先的に紹介する仕組みでもあれば、状況が少し変わるかもしれない。

自治体、保育事業者、保護者――三者が力を尽くしていても、なかなか"3歳の壁"解消までの道のりは遠い。だが、各所がすこしずつでも進化することで、状況が改善される未来を祈りたい。

(取材・文:菅原さくら 編集:泉谷由梨子)

Source: HuffPost Japan

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